「本当の幸せと持続可能性を考える」連続講座 第四回メモ
講師: 向山塗料株式会社相談役 向山邦史氏
(枝廣淳子さんとの対談)
参照URL: 五風十雨農場(ごふうじゅううのうじょう)
http://www.eco-phoenix.com/Gofuujyuuu/index.html
向山塗料は山梨県甲府の会社で社員数17人。
以前は毎年2割成長、上場を目指していた。それだと社長の向山さんは社員の尻をたたかなければならないが、そうすると社員が辞めてしまう。辞められるとまた雇わないといけないので求人を出すことになり、新しく人が入ると教育をしなくてはならなくなり、社長は人事担当者のようになってしまった。
このようにもがいて1年半は最悪の状況だった。夜も眠れず、山を見るとどこで死ねるかと考えた。落ち込んでいて活発には動けなかった。どうやって回復したかは覚えていないが、少しづつ回復期に、人との出会いもあり、社員、会社、社会全体の幸せを考えたら、右肩上がりの成長からは離れていった。
海外のこどもは貧しくても幸せだが、日本は逆。「地球村通信」(http://www.chikyumura.org/about/communication/)でブータンのGNH(Gross National Happiness)を見て、見た瞬間にばちっと来た。経営と両立するか?とは思った。
1995年に前年比92%のマイナス成長の事業計画を始めた。大量生産、大量廃棄はダメと言っても、本当に止めている人はいなかった。それで売り上げを下げる計画を考えた。行動しないと、何かしないとと思ったが、倒産しないようにはしないとと思った。
経費を下げれば何とかなると考え、ISO14001を取得した。勉強して苦労して環境や社会を理解することができた。これによって、経費を使わないのは良いことと社員も腹に落ちた。現在は社員の提言で、クーラーも使っていない。営業車も燃料転換して天ぷら油の利用などを行っている。電気も全ての照明から糸を垂らし、独立してつけたり消したりできるようにして、必要なときに必要なだけつける。PDCAのサイクルがまわり、社員が自分で経費を下げるようになったために、あまり矛盾なく動いている。
最初にマイナス成長の事業計画の話をしたときには、社員はしらーっとし、メインバンクの支店長は血迷ったかと思ったと思う。ゆっくり教えてと言われ、長々話した。
発展する方が会社にとっては楽で、売り上げは、上げた方が楽。売り上げを減らせば社員は昇格させられないし、新入社員もとれない。減らすのは嫌なこと。
社員は最初、売り上げを下げる意味が分からなかった。会議でコンセンサスをつくるなど、説明はずっとして徐々に理解されるようになった。でも社員は売り上げを上げたがるし、ライバルが倒産すると売り上げが上がったり、上下しながら11億あった売り上げを8億まで下げた。でも利益は下がっておらず、ベースアップもすればボーナスも払っている。新卒で300万円くらいの給料を払っている。
日本人の12%は収入が200万円以下と言われる。非正規雇用は金儲け競争にはいいが、社会には良くないというのが向山さんの考えで、向山塗料の社員は全員正社員。
今は誰も会社を辞めなくなったので困っている。新しく人を入れる予定は無く、毎年1歳づつ平均年齢が上がってしまう。
売り上げを上げたり、新規開拓はしないが、お客さんへのサービスは徹底的にする。そのためには社員に満足してもらわないと。会社の自己実現は社員の自己実現。社員に実現したいことを書いてもらって社長がフィードバックするなどしている。
マイナス成長の事業計画にしたことで、取引をやめていった会社も3社はあった。いい会社(取引先)でシェアを増やすようにし、取引先を増やす必要は無いのだから、払いの悪い会社は切る。このため貸し倒れにひっかからなくなったことはメリット。
現在はマイナス成長から横ばいの計画にシフトした。
もうからないこと、バカなことをやっていると注目されて新聞社が来る。地元では環境に配慮した会社として有名になった。
マイナス成長のモデルはメリットだらけで、デメリットは考えつかないが、真似する人はいない。何より経営者が楽。山梨の経済は今、最悪だが向山さんの会社は売り上げを達成することができる。しかし確かに、マイナス成長モデルの会社にはISO14001のようなノウハウとか、総合力が必要とはなる。
向山さんの次の取り組みは会社で食料を作るというもの。自給自足会社を目指す。400坪の畑を社員専用農場とし、会社を週3日休みにして農作業を行うことを提案したところ、17人いる社員のうち3人しか賛成しなかったためこの計画は挫折したまま。それでも向山さんは今、農業・林業・畜産業の拠点となる「エコハウス」を作っている(http://5wind10rain.blogspot.com/2008/07/blog-post_22.html)。
エンゲル係数は低い方がいい。0になればお金はいらなくなる。ブータンの人は半日働いて半日遊んでいても貧しくない。ブータンは目標。
最近、経営者が向山さんの話を聞きたがるので、講演依頼は多い。高校や大学でも、のべ300回、2万人の人に話した。講演のたびに、「赤信号でエンジンを切るだけで燃費は1割違う」と話してはいるが、みんななかなかやらない。頭で理解することと行動には距離がある。どうやって伝えれば行動が変わるのか、自分は死ぬほど悩んで気づいたことだから、他人への伝え方は分からない。いい例はあるけど、「自分でやろう」とはまだならないギャップがある。

